20090712

そろそろ空が白んでくるころ。
日付かわって今日は写真展の搬入・設営だ。

この後におよんでまだ往生際がわるくて、展示用のプリントを床いっぱいに並べて展示順を考えなおす。眺めては並びかえ眺めては並びかえ、の繰りかえし。

見ていると一度納得したはずのプリントのアラが目について気になってしょうがない。時計を見て、今から暗室にはいってやり直せばまだ間にあうか?なんて無茶なことを考える。あと半日後にはギャラリーに持っていかなくてはいけない時間だから物理的に無理。これでいくしかない。

まだ始まる前に言い訳がましいけど、つくづく自分の技術の至らなさに愕然とする。モデルになってくれた人に申しわけない。もっと魅力的だったはずなのに。もっと力のある目だったのに。もっと美しかったのに。
そんなことを今さら言っても始まらない。これが隠しようのない現状の自分の実力なんだろう。

個展は2回目。でも前回はこんなにナーバスにならなかった。前回の被写体が街の風景だったということが大きいんだと思う。街とか無機物は自分の思いいれで制作できるけど、ポートレートはモデルになってくれる人がいる。
その人やその人の知人友人が見てくれることを意識しすぎているのかもしれない。

いや、やっぱり自分はポートレートが好きだからなんだと思う。どんな被写体よりも人が一番おもしろい。魅力を感じながらテンションをあげて撮影できるし、相手から色々なインスパイアを受けて自分を成長させることができる。なにより新しい出会いは純粋に楽しい。

展示が始まればまた新しい出会いがある。
展示した写真をきっかけに色々なおしゃべりがしたい。もちろん写真関係の人には厳しいアドバイスをたくさんもらいたい。

ちょっと怖い気もするけど、その何倍も楽しみだ。
設営のために、そろそろ寝よう。

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20090709

ようやく写真展用のプリントが全部できた。長かった。
予定では半月前までには終わらせておくつもりだったのに、結局ギリギリになってしまった。出来上がったプリントを見てもまだやり直したいところはあるのだけど、もう時間的にどうしても無理だ。乾燥させたりフラットニングしたりすることを考えたりするとここらで完成ということにしなければ。

仮に写真展まであと一ヶ月あってもやっぱりギリギリまでやってしまうんだと思う。やればやるほど自分の足りなさが見えてくるし、より高いクォリティーを目指してしまうものなんだろうな。

案内状もまだ出せていない。
早めに出そう、と思って6月のはじめには印刷ができていたのだけど、プリントが全部できあがるまでは「ぜひ来てくださいね」なんてとてもじゃないけど言えなかった。これから急いで出さなくては。

設営は日曜。この後におよんでまだ写真展をちゃんと開催できるかイメージがわかない。現実感がもてない。ここ数ヶ月、撮影・暗室と気を張りつめてきて、プリントが完成したとたんに不安になってきた。

個展はこれが初めてじゃないのに落ちつかない。
誰も来てくれなかったらどうしよう。
たくさん来てくれたらどうしよう。
なんだかわけのわからない事ばかり考えてしまう。

ぼんやりしてるからだな。
まだやるべき事はたくさん残っている。
まずはお世話になった人や知人友人に案内状を書くことだ。

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20090701

頭痛・悪寒・鼻水・くしゃみ・関節痛。
うっかり風邪を引いてしまった。

先週からの暗室作業で不摂生をしすぎたのが原因らしい。
こんな時に作業を進めてもミスばかりしてしまうので、二日ばかりゴロゴロと横になってすごした。

うちにはテレビがないし、本を読むのもだるい。かといって延々と眠り続けることもできない。布団の上でぼんやりと天井を見上げる。
少し良くなってきて、パソコンの電源を入れる。

ピナ・バウシュさんの訃報。

ダンサーであり振り付け師でもあるピナ・バウシュさんは、過去に一度だけ会ったことがある。8年くらい前、バーテンダーをしていた頃に働いていた店にいらした。

シャンパンベースのカクテルを召し上がったと記憶している。本当に美しいたたずまいの人だった。ただそこにいるだけでまわりの空気を優しく包む。カクテルが一筋の糸になってピナさんと一体化してるようだった。笑顔が素敵だった。

その日は他にお客さんもいなかったし時間も少し遅かったこともあって、お帰りになるときにピナさんとお連れの方とバーのオーナーの三人で記念撮影をすることになった。当時買ったばかりのライカM3を更衣室から急いで取ってきて興奮しながら何枚かシャッターを切った。ピナさんは3人なかで一番小柄だったけど、一番存在感があった。強くて柔らかい存在感。写真の出来は少しぶれて今ひとつだったけど、それでもその時の楽しい雰囲気が写っていた。

あのピナ・バウシュさんが亡くなった。
ダンサーや振り付け師としてのピナさんをよく知っているわけではないけど、数時間ながらカウンターを挟んで接客させてもらい撮影もした。元バーテンダーとしてかつてのお客さんが、写真家としてかつての被写体の人が亡くなった事を知ったのはピナさんが初めてだ。

そのことがジワジワと胸を締め付ける。

誰かの死は自分の生を問うてくる。
時間が有限であることを突きつけてくる。

寝てる場合じゃない気がしてきた。
今取り組んでいる作品は遺作になる可能性があるし、誰かのポートレートは遺影になる可能性がある。中途半端な事は出来ない。下手であってはならないし、少なくとも手を抜いてはいけない。
撮影もプリントも丁寧に、相手に畏敬の念を持って。

残された者がやるべきは、ちゃんと生きること。前に進むこと。

ピナ・バウシュさんのご冥福を心から祈ります。

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